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漬物の製造法

いろいろの漬物の製造法

漬物は「漬かる」を基準にして新漬、古漬、発酵漬物に大別できますが、そのそれぞれに数多くの漬物があって消費者に選別、食膳に登らせるたのしみを提供しています。それぞれの分類の基準的な製造法、特徴、おいしい食べ方、漬物によってはその機能性を説明してみましょう。

野菜の風味が主体となる漬物群(新漬)

調味浅漬・菜漬が主体になります。野菜を塩漬にしたのち簡単に調味した漬物です。つい最近までは主婦が漬けていた白菜漬や胡瓜浅漬などお新香と呼ばれる一群の漬物で最近の低塩化で家庭で漬けにくくなっていて漬物工場でつくられることが多くなったものも含まれます。

工程図

製造ポイントは塩漬から出荷、販売まで低温を利用し乳酸発酵を極力抑えて菜類・胡瓜では葉緑素、茄子ではアントシアン色素、大根では褐色化防止そして美しい野菜、新鮮なその野菜の持つ香り、清澄な注入液で鮮度感を出すところにあります。製品成分は食塩2〜2.5%の低塩に全て仕上げ野菜の風味と食塩の両者のバランスの良い味つくりを生命としています。

白菜漬

白菜を4つ割りにしてよく手もみ洗いして塩漬し袋に入れて同量の調味液を注入して密封したものです。緑・白・黄の3色対比の美しい白菜漬が清澄な注入液の中に浮かんでいるものを選びます。食塩2%、化学調味料0.3%の味覚になっています。4cm幅に切って食べます。最近は減りましたが半結球白菜の山東菜漬はコクがあって白い茎より葉の部分が多いので探す人もよくいます。

茄子調味浅漬

茄子の浅漬には中茄子、長茄子、小型長茄子、小茄子、泉州水茄子の5系統があります。いずれも茄子重量の6%の食塩・0.6%の焼みようばんの混合物と水洗茄子を転動してから茄子重量と同量の0.6%ビタミンC溶液の中に投入し冷蔵庫中で3日間漬込だのち取り出して袋中に入れて同量の調味液を注入し密封します。焼みようばんは茄子の皮の色素アントシアンの分解防止、ビタミンCは果肉の褐変防止の役割をします。食塩2.2%、化学調味料0.5%の味覚です。茄子浅漬は知られざる新漬での食物繊維の宝庫で2.3%も含みますので長茄子漬1本120gを食べると3gが体内に入り消化器系の機能性を発揮します。またのぼせを抑えたり含まれるルチンは高血圧を防ぎます。

砂糖しぼり大根

新しい技法でつくられた人気になっている大根浅漬です。大根は3cmくらの緑の茎を付け塩漬したのち液糖の中に浸して糖の浸透圧で大根を脱水ししわを寄らせて糖を中に浸み込ませたものです。干大根のようにしぼった状態になるのでこの名があります。緑色の茎がポイントとなり大根の白と調和し食べても新鮮なたくあんの感じがして人気があります。食塩2.5%、糖分12%、化学調味料0.2%のさらりとした味で厚さ1cmくらいに切って食べます。 この砂糖しぼり大根を乱切りにした刻み浅漬もアクセントとして季節に応じてシソの葉、新高菜漬、カブの茎等を選んで少しまぜてやると袋に入れて外観も美しく甘味のある浅漬として好評です。

グリーンボール漬

キャベツの漬物はヨーロッパのサワークラウトがソーセージの皿に少しのせられるくらいで良いものがありませんでした。ところが50日栽培の800gくらいの小型グリーンボールが発売されて、その2つ割りの漬物が売られて人気になっています。 塩漬して醤油、ニンニク、唐辛子を含む調味液と袋に詰めたものです。食塩2.5%、化学調味料1.5%、酸0.4%とやや強い味に仕上げてあります。鮮度の良いうちに1.5cmに切って召し上がって下さい。キャベツの一族は胃潰瘍を防ぐビタミンUを含んで胃の中の傷ついた組織を修復してくれます。また食物繊維も2.7g/100g含んでいて消化器系機能調整をします。

千枚漬

偉大なる調味浅漬といえるもので京漬物を代表しています。10月上旬の早生大カブにはじまり聖護院カブの遅どりの3月一杯までの季節の浅漬です。 収穫したカブの皮をむいて3mmの厚さにカンナで薄切りにしこれを容器に少しづつずらしながら塩をまいて重ね漬します。この下漬の食塩は2%、冷蔵庫に一日おいて本漬に移ります。下漬を作業台の上に逆さにして取り出し、別に作った調味液、昆布とともに樽に本漬します。カブを一並べ、昆布2〜3枚、調味液の順に漬て重石をして2日おくと昆布のぬめりがでて完成します。食塩2%、全糖12%、化学調味料0.5%、酸0.4%の京都の香り豊かな上品な漬物です。樽詰を買うと美しい緑の壬生菜漬が入っています。これは千枚漬を幅3・に切ってくるくる巻いて壬生菜でしばるか、壬生菜漬を切って芯にして3・幅の千枚漬で巻くという緑と白の対比で千枚漬の美しさを増すために入っているのです。千枚漬は低塩で旨く美しく食欲増進の最高の漬物です。

鮭のはさみ漬

北海道の戦後、誕生した野菜と魚の麹漬です。白菜、キャベツの葉の浅漬を大切りのまま米麹をまきながら一枚づつ大きなバット状の容器に積み上げところどころに紅鮭の薄い切り身をはさみます。厚さ10cmくらいに重ねて軽く重石をして本漬、翌朝まで0度の冷蔵庫で熟成し包丁で4角く切って売ります。紅鮭10%、白菜62%、キャベツ12%、大根10%、昆布3%、人参3%が積み重ねの割合です。食塩2%、糖分2%、化学調味料0.5%、酸0.2%の分析値を示します。このケースでは重ね漬のとき少量の糖分、化学調味料、酸からなる調味液を散布します。低塩に加えて野菜と米麹と鮭の旨味成分が混ざり合って絶妙の味を示します。

ニシン漬

北海道の冬の伝統漬物です。短冊切りした大根、大切りのキャベツと3・幅に切った身欠ニシンを米麹と食塩をふりながら漬け落としブタをして強い重石で漬けます。20日くらいで熟成します。この熟成は北海道ならではのもので乳酸発酵をさせないで野菜とニシンと米麹の味の調和をたのしみます。 したがってキャベツは発酵しやすいので北の旭川では多く入れますが南の函館では発酵しにくい大根だけで酸をつくらないようにします。北海道の市販品は食塩2.5%、大根50%、キャベツ35%、ニシン10%、米麹5%くらいの配合です。北海道では氷を割って取り出すので保存性は良好ですが、催事で買ったニシン漬は早く食べる必要があります。

野沢菜漬

日本3大漬菜の中で最もポピュラーで5万tもの出荷量があります。1年中、緑色の美しい袋入りの野沢菜漬が量販店に並んでいますが、1年中全国に供給と必ず緑色の菜漬をという課題で産地の長野県の漬物業界は苦労を重ねて解決しました。まず、とにかく毎日、青々とした原菜が工場に入荷すれば2、3日の漬込みで美しい緑色で出荷できるので原菜が入るかが勝負。 長野で10月、11月と収穫したあと12月、1月は徳島、2月は静岡、3、4、5月は山梨、長野のトンネル栽培、6月は茨城、7、8、9月は長野の八ヶ岳中腹、戸隠など経度と高さを利用した産地移動をするのです。1年中長野でと思い勝ちですが日長の関係で小さいうちに抽苔すなわち花が咲いてしまいうまくゆきません。 このようにして全国各地から集められた野沢菜は工場に運ばれたのちに漬込み容器に詰めて上から食塩水を満たし、これを揚り水冷却循環装置(チラー)に接続します。容器に管を入れてポンプで吸い上げて冷凍機の中を通して再び容器に戻すのです。2時間で4度に下がりますからそのまま2日間冷却塩漬を続けます。これを第1回の冷却工程とし、ついで菜を取出して水洗いし300g束として袋に入れ、あらかじめ調味液冷却装置で5度に下げた調味液150mlを注入する第2回冷却工程、袋を密封後、0度に調節した製品冷却液に入れ1時間冷やす第3回冷却工程、そして発泡スチロールの容器に20個くらいを詰め上に氷袋2つをのせ容器をシールして運ぶ、第4回冷却工程を経て店頭にならびます。畑から店頭まで低温を使っての葉緑素の化学的分解と乳酸発酵の乳酸による黄褐色のフェオフイチン化を防いで美しい製品を提供しています。 野沢菜漬は2.2%という少ない食物繊維による軟らかい水持ちの良い茎をたのしむため長さ4・に切って食べます。叩くように細刻すると持ち味がなくなります。野沢菜漬の食塩は2%、化学調味料0.5%で野沢菜の持つおとなしい風味と混ざりあった茎の中の液を口の中でたのしむのです。

広島菜漬

日本3大漬菜の一つ広島菜漬は広島市の周辺でしか栽培されていないので生産量は少ないのですが大尸うまい漬物です。野沢菜が高さ1mにもなる細長い葉茎なのに対して白菜状の平茎というやや茎の硬い幅広い漬菜です。普通、8月播き11月収穫の作型で収穫後水洗し2つ割りにして塩漬にします。さらに2度漬に移り踏み込み工程を経て塩度4%に漬上げます。 漬あがった菜300gに調味液200mlを加えて密封しこれをマイナス30度で冷凍してしまいます。野沢菜漬の産地移動、4回の冷却工程の代わりに広島菜漬は冷凍で美しい緑色を保つのです。この冷凍漬菜は注文に応じて出荷しますが移送中に解凍するので凍っていたことが消費者にはわかりません。漬物の冷凍は食物繊維の多い野菜に限定され広島菜漬、新高菜漬、菜の花漬、茄子しば漬しか実用化されていません。広島菜漬は2.5%、化学調味料0.5%と漬菜の持つ弱い辛味が調和し日本一の菜漬といわれています。食物繊維が2.7%と野沢菜漬の2.2%より高く硬いので2・に切って食べると持ち味がでます。

高菜漬

日本3大漬菜の1つ高菜漬は明治年間に中国から奈良農試に種子が入りその後福岡県瀬高町、和歌山県新宮市、山形県内陸部の3ケ所で栽培されています。新宮は菜でおにぎりを包んだメハリ寿司が有名ですが生産量は少なく、主として瀬高と山形でつくられています。広島菜漬と同様にふくろ詰めして冷凍された新高菜漬の人気が上がっていますが、量的に多いのはべっ甲色になり特有のかおりを持った古高菜漬です。新高菜漬は美しい緑色の菜漬で食塩2.5%、化学調味料0.5%の味で一般に2・幅に切り御飯のおかずにする他、納豆に混ぜると納豆が生き生きとしてきます。新宮のメハリ寿司も最近はこれを使っています。山形では青菜(セイサイ)と呼ばれ9月上旬播きの11月中旬収穫になっています。瀬高では10月上旬苗床播き,12月上旬定植、4月上旬収穫の春型栽培です。古高菜漬は瀬高で主としてつくられて青菜に紫高菜の血の入った優秀種の三池高菜を使っています。4月収穫の高菜を食塩12%、ウコン粉0.2%を使って大型タンクに漬込みます。菜柄の白つちやけた感じを取るため1回漬替えて踏み込んで細胞をこわします。このままの状態で一年間は保存可能です。製品化に際しては流水で3%まで脱塩し、原重量まで圧搾し調味液に浸漬したのち小袋詰めとして出荷します。古高菜漬はタイプが2つあって1つは食塩4%、醤油類15%、化学調味料2%の低塩、旨味の強い古漬臭の少ないもの、他の1つは食塩7%、醤油類7%、化学調味料0.5%の高塩、旨味の弱い古漬臭の強い物に分れます。古漬臭は新高菜漬が辛味の強いアリル辛子油を主体にしているのに対し辛子油が減少し、酪酸、イソ吉草酸など低級脂肪酸、フェノール、O-クレゾール、グアヤコールなどフェノール類が本体です。この古漬臭を九州出身の方は良いにおいと判断し、都会では発酵臭とみなして喜ばない傾向にあります。製品を低塩で作れば流水にさらして脱塩する時間が延びてにおいが除かれ,高塩にすれば脱塩時間が短くなり古漬特有の臭いが強く残ります。古高菜漬は熟成中に乳酸醗酵もするので、乳酸が0.5%くらいになります。最近はこの古高菜漬を2・幅に切れと言われても面倒だと言う人のために刻み高菜と言うあらかじめ切ってあるものが発売されています。(高菜昆布)(ゴマ高菜)というように昆布だのゴマと混ぜたもの、刻んだものを炒めたものなどです。古高菜漬は刻んで御飯のおかずにしたり、ラーメンの具、また油炒めにして惣菜売場に並ぶなど利用方法があります。高菜漬は食物繊維が4%あります。

カラシ菜漬

野沢菜漬で最も旨いものはノリ、トロといって寒さに当たって茎が傷害を受け粘りがでた状態のものです。富士山麓でつくった野沢菜漬に、ノリがよく見られますが栽培法方が進んで一般的でなくなっています。このノリがよく見られるのは福岡県北野町のカラシ菜の1つ山潮菜漬です抽苔が早く茎が立ち上がった時に収穫し葉だけでなく徒長した軸も食べます。11月から2月にかけて播き3月から4月に穫ると、トウ立ちしてノリが出て粘りの風味がたのしめます。3%の低塩とあいまって実によいものです。トウ立ちの軸も含めて2〜3・に切って辛味と粘りと美しくい緑色を賞でながら食べます。 カラシ菜の一族にはこの他、久住高菜、阿蘇高菜などがあります。

搾菜(ザーサイ)

搾菜すなわち大心菜は中国漬物として定着し中華料理店でスライスが付け出しになったり豚と搾菜のうま煮、搾菜ラーメンがメニューに並んでいます。この搾菜は形から想像が付きませんがカラシ菜の茎の肥大した部分です。辛味成分を分析するとカラシ菜、高菜と同じアリル辛子油が主成分で分類上一族であることがわかります。瀬戸ガメに入れて輸入される中国四川省の搾菜は茴香(ウイキヨウ)、肉桂、山椒、唐辛子等の香辛料を多用し重石をきかせて漬けているので文字通り搾った状態になって漬物の中で最も歯切れの良いものです。搾菜には四川産のようにスパイスの効いたものと単に塩漬にしたものがあります。油炒め製品が売られていますが四川産はスパイスが酸化防止剤の役目をするので寿命が長く、塩漬を使ったものは油が酸化されやすいので早く食べる必要があります。

キムチとその関連漬物

キムチも野菜の風味が主体の漬物に属しますがスパイスが効いて野菜風味がかなり減殺されていますので項目を改めて説明します。日本国内の漬物生産統計をみますと平成8年まではたくあんが12.4万tで1位でしたが平成9年にキムチ12万t、たくあん11.3万tとなりキムチが1位になりました。キムチはその後も上昇し平成11年は25万tとなり全漬物生産量113.5万tの22%を占めています。 キムチは「野菜および薬味を魚醤油を使って漬込んだ弱い呈味の醤油漬」と定義でき、種類は(1)ペチユキムチ系、(2)カクテキ系、(3)トンチミー系の3つに分けられます。キムチは白菜を使ったペチユキムチが完璧な漬物であるので朝鮮半島で食べられている漬物は他にはカクテキ系の大根カクテキ、チョンガキムチ、トンチミー系のムルキムチそして緑色の野菜の若ネギのバッキムチ、カラシ菜のカトキムチ、青唐辛子のプッコチユキムチ、醤油漬のエゴマの葉のケンニップジヤンアチくらいです。 キムチも国際化してきており国際貿易の円滑化のためのコーデックス国際規格が2001年には完成します。

ペチユキキムチ

白菜キムチのことで日本のキムチの大部分を占めています。日本のペチユキムチは大別すると白菜漬にキムチの素(タレ)を混ぜた「タレキムチ」、白菜漬に大根、ネギ、人参の刻み物を加えてキムチの素を混ぜた「本格キムチ」に分かれます。タレキムチは塩度2.5%の白菜漬5に対し同じく塩度2.5%のキムチタレを1の割合で混合したもので4つ割の白菜漬そのままから2cm幅に切った白菜漬を使ったものまで種々あります。キムチタレは魚醤油、化学調味料、パプリカ、粉唐辛子、すりニンニク、すり生姜と白菜漬えの付着のために少量の天然糊料を加えたものです。本格キムチは白菜漬80%、刻み大根15%、細切り人参3%、小口切り生ネギ2%を混合してキムチたれを少量加えて撹拌してつくります。製造ポイントはキムチたれに使うパプリカ、粉唐辛子の色調が鮮やかな橙赤色であること、韓国産大房種の辛味中庸、旨味、甘味の多い唐辛子を必ず使うこと、完成品は食塩2.5%、唐辛子1%、すりニンニク0.5%、すり生姜0.5%、化学調味料1.2%の分析値を示すことです。ペチユキムチにはこの他、宮廷料理の流れをくむポサム(包み)キムチという薬味を白菜漬の葉、数枚で包んだものがあります。

カクテキ

大根を2cm角のサイコロ状に切り唐辛子をまぶして1時間ほどおいて赤い色をしみ込ませてから食塩、薬味、魚醤油を使ってカメに漬けます。薬味は粉唐辛子、ニンニク、生姜、ネギを使います。 角切りの大根がガリガリしていて日本人には好かれる漬物でなかったのですが、最近、砂糖しぼり大根という塩漬大根を液糖の浸透圧で脱水した漬物を刻んでカクテキをつくる方法が開発され甘さと軟らかさから注目されるようになっています。

キムチの機能性・薬食

キムチは揮発性のスパイスのニンニク、ネギ、ニラ、生姜と不揮発性のスパイスの唐辛子の両者を持つ世界でも珍しい食品です。ネギ科植物の硫黄化合物の機能性、とくにニンニクの強い抗菌性とそれによる胃中のピロリ菌抑制による胃ガンの予防、抗菌性の物質アリシンからニンニク臭の発生時に起こる反応によるトリスルフィド、アホエンの血小板凝集阻害による動脈硬化、脳梗塞の防止さらに生姜の辛味ジンゲロールの大腸ガン抑制、加えて唐辛子の油脂燃焼促進による肥満防止効果があります。キムチは将に複合薬食の食品なのです。

キムチの具材度

日本の漬物と異なりキムチは料理に使われることが多く、この点は中国、ヨーロッパの漬物とよく似ています。肉、豆腐、椎茸、それと同量のキムチに味噌、醤油、コチユジヤン、ゴマ油を使った鍋と味噌汁との中間のような韓国特有のキムチチゲ、牛肉とその半量のキムチによる各種野菜、ワリ下、コチユジヤンのキムチすき焼き、キムチ炒飯、キムチスパゲティ、キムチかゆ、簡単なところでは冷麺えのキムチ添加、売れ行き上昇中のナムルを使ってのキムチビビンバ、さらに豚肉とキムチの串焼き、豚肉とキムチの炒め物キムチポックムと広く展開されています。唐辛子、ニンニク、生姜のスパイス効果と料理上の順応性の高い白菜漬ならではのものでしよう。

調味梅干・カリカリ梅

梅干・梅漬は「漬かる」を基礎とした分類では「野菜の味を主体にした漬物」の野菜を果物に読み替えればここに入ります。ただ新漬類とかなり異なる点も見られますので項目を改めて説明します。 梅の漬物は昭和40年代から大きく変化しました。その理由は低塩化要求と梅が年1回の収穫であるというところにあります。年1回収穫は梅を高塩で漬けておいて翌年の収穫期までもたすための塩度が20%以上必要ということと市販品の塩度は低塩志向で10%に抑えたいという矛盾です。食塩差が10〜15%といいうギャップを埋める製造法が必要になったのです。低塩にするためには梅漬物の食塩を流水で除く事が必要になります。そうすると流水脱塩で一緒に流失した風味をあとから追加しなければなりません。味覚資材を加える事になり昭和48年の日本農林規格(JAS)で梅干、梅漬の他調味梅干、調味梅漬が加わりました。

調味梅干

梅干を糖類、食酢、梅酢、香辛料等またはこれらに削りぶし等を加えたものに漬込んだもの、または調味梅漬を干したものが調味梅干の日本農林規格(JAS)です。6月中旬に完熟した梅を収穫し20%以上の食塩を散布して大型タンクに漬け、落としブタをして重石をします。一両日で水が揚がるのでそのまま放置し、普通は7月の土用に戸外で3日間乾燥します。7月干しは陽が強く濃い茶色になりますので淡色に仕上げるときには10月に干す事もあります。赤い色に着色する場合は7月上旬に赤シソがでるのでそれをクエン酸水溶液を使って手揉みしてアクを除いて梅干の漬込み容器に入れます。乾燥の終わった梅干は塩が吹く場合もありその場合は25%以上、塩が吹かなくても塩度22%以上はあります。これから梅干は調味加工まで容器に入れて保存します。調味梅干を作るにはこの梅干の塩度22%以上というのはあまりに高いので流水で脱塩し調味液に浸漬します。現在の調味梅干は2種に分かれ食塩8%、酸2.5%、化学調味料100gあたり20・以下の低塩のすっきりとした味のものと食塩が12%、酸3.5%、化学調味料100gあたり200〜500・のやや旨味の強いものがありす。したがってどちらをつくるのかを考えて脱塩時間調整、調味液処方の2つをきめます。調味梅干の中に「カツオ梅干」というものがあります。これは細刻した赤シソの葉とカツオブシを混ぜて味覚の濃い調味液に浸したものとの普通の調味梅干を用意してその両者を混ぜ合わせます。カツオ梅干は製品の食塩10%、酸3%、化学調味料0,25%で食べやすく人気は一番です。調味梅干には山梨県に多い甲州小梅を完熟させて小梅干をつくり調味加工した通称「干しっこ」というものもあります。1個2gくらいで食べやすく小さいので調味加工しない高塩の小梅干もみられます。

カリカリ小梅

旅館の朝、お茶とともに出てくる赤い小粒の梅漬です。歯に当たる音からこの硬い梅をカリカリ梅と呼んでいます。5月下旬の未熟の小梅を収穫します。6月に入って熟して軟らかくなった梅は硬くなりません。この未熟の梅をカリカリ梅にするには2つのテクニックが必要です。一つは梅を塩漬にすると梅の組織物質ペクチンが自分の持つ酸の攻撃で分解し軟らかくなるので塩漬時にカルシウムを加えてペクチン酸カルシウムとして強く硬化しておきます。他の一つは未熟の梅ですから塩漬にすると脱水されシワが寄ってふっくらとした梅漬になりません。最初、食塩水10%くらいからスタートして毎日1%くらいだましだまし加えてシワを寄らせない努力をするのです。硬化と追い塩でカリカリ梅が出来るのです。このようにして食塩10%、酸3%、化学調味料0.5%の味覚のカリカリ小梅が完成します。紅白2粒のカリカリ小梅を四角い袋に入れた製品は食卓以外に珍味としてバーのチャームにも出ています。中梅のカリカリ梅もあってこちらは1粒を袋に入れて売ります。また近頃はこの中梅のカリカリ梅の果肉をくだいておむすびの芯に使うことも増えています。

調味梅漬

成熟した梅を塩漬にして赤シソで着色したもので干すと赤梅干になります。これを干さないで食べるのが調味梅漬の正統です。関西でドブ梅といって白い御飯にのせて潰すと赤い果肉が飛び出しておいしいものです。近頃、カリカリ梅に押されて少なくなりましたが復權させたい漬物です。

調味液の味が主体となる漬物(古漬)

醤油漬、酢漬、味噌漬、粕漬など古漬は食塩20%を使って野菜を塩漬した塩蔵原料からスタートします。したがって塩蔵が上手に行われないと軟化、異臭発生、変色が起りその後の工程をどううまくやっても良い製品になりません。上手に塩蔵原料が出来れば以下の工程で製品になります。

工程図

塩蔵原料作成法

以下の技法で塩蔵原料をつくります。塩蔵5原則といって1: 適種選択 2: 適期収穫 3: 迅速漬込 4: 迅速水揚げ 5: 食塩20%、を守れば良質の塩蔵原料が得られます。中国、タイなどの海外塩蔵原料も大量に輸入されていますが、この塩蔵5原則を守る事が重要です。

  • 茄子
    (1次漬)茄子に水を掛けながら転動機に入れ茄子重量の15%の食塩、0.3%の焼みようばんを混ぜたものを加え3分間転動し漬込みタンクに移し、落としブタをして重石をする。1次漬の歩留り65%、最終塩度10%(2次漬)1次漬の4日後に2次漬をする。他のタンクに入れ替えながら1次漬原料重量の15%の食塩をまく。落としブタをして重石をする。最終塩度20%以上、歩留り50%。
  • 山牛蒡
    1回漬とする、洗浄機できれいに水洗し漬込み予定のタンクに30・の深さに水を入れたところに投入しながら原料30%の食塩をふりまく。食塩散布法はタンクの下1/3は25%、中1/3は30%、下1/3は35%ととする。落としブタをして重石をする。漬込み3ヶ月後から使う。1ヶ月後に使いたいときは原料に対し3/1000のクエン酸と1/1000の焼みようばんを加える。
  • 赤シソの葉(揉み)
    1回漬とする。塩度20%の塩水に1%のクエン酸を溶かす。収穫した赤シソの葉を水洗いし、10%の食塩を加えてよく揉む。この場合、撹拌機を使ってもよい。この揉んだ赤シソの葉を先に用意した食塩水に入れて取出し漬込みタンクに入れながら原料の20%の食塩をまく。落としブタをして重石をする。最終塩度20%以上、千枚漬シソの場合は50枚を1束として上記食塩水に浸してからタンクに30%の食塩とともに重ねてゆく。
  • ニンニク
    1回漬のあと、3回食塩水の入替えをする。調整したニンニクを90度の湯の中に4分間浸漬する。浸漬後ニンニクを取り出し容器に入れニンニクがひたひたになる量の24%食塩水を注ぐ。この量は普通ニンニク重量の80%、落としブタをして重石をする。15日後に塩水を捨て新しい24%食塩水を注ぐさらに2回、15日毎に24%食塩水を入れ替えて完成する。
  • 越瓜
    (1次漬)奈良漬用は2つ割り、鉄砲漬用はドリルで開孔し、いずれも中身を取り出し、奈良漬用は割った方の窪みに鉄砲漬用は孔の中に食塩をすり込み奈良漬用は中身をうえにしてタンクに並べながら原料の15%の食塩をふりまく、落としブタをして重石をする。(2次漬)1次漬の4日後に2次漬をする。形が崩れないように並べて1次漬瓜の15%の食塩をふりまく。最終塩度20%以上、奈良漬用の歩留り50%、鉄砲漬用の歩留り45%。
  • 生姜
    1回漬とする。よく洗浄し、タンクに差し水注入用の円筒を立てて原料の20%の食塩、1%のクエン酸を混ぜて散布する。ここで円筒から生姜の30%の梅酢を注入し落としブタをして重石をする。そのままか、あるいは上面に潰れた梅干をまいて貯える。梅酢の代わりにクエン酸4%、食塩22%の食塩水を使ってもよい。最終歩留り80%、最終塩度18%、酸1%。
  • ラッキョウ
    1回漬とする。洗浄機できれいに水洗いする。水洗いした原料ラッキョウをタンクに入れながら原料重量の15%の食塩をふりまく。ここで漬込みタンクの上部に水が来るまで差し水をし落としブタをして重石をする。最終塩度10%。この状態で放置すると発酵して泡が多く出る。発酵が終わったら冷暗所に貯えるか、塩度を16%まであげる。
  • カリカリ小梅
    1回漬とする。小梅を5月20日頃の未熟のうちに穫り、よく洗い漬込み容器中の同量の10%食塩水の中に投入し落としブタをして重石をする。48時間後に小梅重量の0.6%の消石灰と2%の食塩を加える。以後毎日2%の食塩を追い塩して最終塩度20%で終える。約2週間を要する。
  • 胡瓜、大根、その他
    2回漬して歩留り 胡瓜55%、大根60%、最終塩度20%以上。 塩蔵に独特の技法を使う物を集めて説明してみました。この他に福神漬だけに使われる刀豆、蓮根、辛味の残る青唐辛子、塩蔵品を佃煮原料に使う葉唐辛子がありますがいずれも食塩20%になるよう漬ければ大丈夫です。難しいのは高知のピーマン漬の原料で普通に漬けると浮力で落としブタと重石が逆さになって沈んでしまいます。2つに割って漬けるか、漬込容器の壁面1杯の特注落としブタを作って徐々に沈めてゆきます。

調味の基本

古漬は調味が重要です。簡単に調味処方の作成手順を示します。

  • 自社規格の決定
    資料や文献を見て自分の会社で製造する製品の成分規格をつくります。原価計算、加熱殺菌の有無を考慮して下さい。規格決定項目はa. 食塩、b. 醤油類、c. 化学調味料、d. 天然調味料、e.甘味度、 f. 酸、g. アルコール、h. 色素、i. 香料が主なもので時に j.色素が加わります。
  • 圧搾野菜と調味液の配合量と製造総量の決定
    古漬は塩蔵原料を切断、脱塩、圧搾したものを調味液に浸して復元します。したがって調味液を圧搾野菜が吸収して製品になったときの配合から逆算して圧搾野菜と調味液の配合を決め、その合計量の製造総量を確定します。例えば胡瓜刻み醤油漬では圧搾40%胡瓜40・を70・の調味液に浸すと復元後の製品は胡瓜84・、残存調味液は26・となります。製造総量は110・です。
  • この製造総量に1で決めた自社規格の%を乗じて各資材の必要量を決定します。
    例 さくら漬 自社規格、 食塩4%、化学調味料1.2%、天然調味料0.5%、 甘味度1.2%、酸0.8%、色素0.001%、固体対液体47.5・対42.5kg、製造総量90・ 調味処方 野菜配合 大根20・ (圧搾40%)シソの葉0.02・、調味液70・  製造総量90・、復元後野菜47.5・、調味液42.5・
工程図

福神漬

業務用の多い漬物です。福神漬のJAS 規格は糖用屈折計示度30度以上、全窒素0.3%以上、内容重量300g超では原料野菜7種以上、固形物の大根占有率80%未満、内容重量の対する固形物割合75%以上、内容重量300g以上では原料野菜5種以上、固形物の大根占有率85%未満、内容重量に対する固形物の割合70%以上であります。福神漬は古漬中で最も知名度が高く生産量は6万tもあります。 色があかるいこと、甘味の強いことの2つが重要で大根、茄子、刀豆、蓮根、生姜、シソの葉、白ゴマの7種の原料野菜を使い砂糖、醤油類、酸からなる調味液に浸してつくります。食塩4.5%、醤油類10%、甘味度30%、酸0.4%、アルコール1%、化学調味料0.5%の呈味成分を製品中に含んでいて着色料は0.05%です。福神漬はカレーライスの付属品としてよく食べられ、これは本場インド料理の チャッッネの代用として使われたのです。赤い色調の他にカレーライス福神という橙黄色のものもあります。

胡瓜刻み醤油漬

典型的な醸造醤油香をたのしむ漬物です。漬物製造総量の30%が醤油で単純な味付けで消費者をあきさせません。食塩4.5%、化学調味料1.5%、酸0.2%が製品の呈味成分です。

胡瓜一本漬

ときわ系というふっくらとした胡瓜を醤油系の調味液に浸したものです。味覚は2系統あって食塩3%、醤油類6%、化学調味料1%で低塩のため味がボケるのを防いで唐辛子で味をしめているものと、食塩5%、醤油類12%、化学調味料2%と味の濃厚なものです。北海道や九州ではこれに甘味を加えたものが喜ばれます。

シソの実漬

シソの実漬にはシソの実だけを使ったもの、シソの実、大根、生姜を配合し醤油色に着色したもの、シソの実、胡瓜、生姜を配合し緑色の着色したものがあります。シソの実漬は、シソの実の完熟前に収穫、塩漬したものはおいしく、完熟してがくの開いたシソの実では良いものはつくれません。シソの実漬はおむすびの芯に良く、シソの実だけを使ったものは汁粉の脇の小皿に出すと汁粉の味を引立てます。 ピーマンの産地の高知にはピーマン、胡瓜、生姜、シソの実を使ったピーマン漬があります。シソの実漬は食塩6%、醤油類15%、化学調味料2%、甘味度4%の成分です。

大根キムチ

韓国のキムチには塩蔵原料を使ったものはほとんどありません。この大根キムチあるいは胡瓜キムチは塩蔵大根や塩蔵胡瓜を切断、脱塩、圧搾後、醤油漬としてスライスニンニク、粉唐辛子を加えたものです。キムチ風醤油漬ですが橙赤色に着色したニンニクの香りと唐辛子の辛味が十分にキムチ感覚を出しています。食塩4.5%、醤油類5%、化学調味料1.5%、甘味度4%、酸0.3%です。復元後のニンニク4%、唐辛子1%でペチユキムチではすりニンニク0.5%以上は具合が悪いのですが醤油漬のスライスニンニクは4%位は入れます。

カツオブシ大根

比較的新しい製品で大切りの塩蔵大根か干したくあんを切って醤油漬にしてカツオブシを加えたものです。低塩濃厚調味でとくに甘味が効いておいしい。食塩3.5%、醤油類8%、化学調味料2.2%、甘味度5%、酸0.2%です。

山午蒡醤油漬

橙赤色の山午蒡醤油漬は斜切りにて漬物の盛り合せに加えると一気に華やかになります。すしの巻物としてもしば漬、干したくあんと並んでよいものです。アザミゴボウという菊科の植物の根を塩蔵したのち古漬の技法で製造します。食塩5%、醤油類8%、化学調味料1.5%が製品分析値です。山午蒡漬は精油が多く良い香気がたのしめます。ということは香気成分が酸化してガソリン臭になることも多いのです。購入したらなるべく早く食べましょう。

しば漬風調味酢漬

乳酸発酵漬物の京都のしば漬をまねて塩蔵原料を使ってつくったものです。胡瓜7割、茄子1割5分、生姜、茗荷、シソの葉各5分の割合に製品配合がなるようにつくります。 味には2つの傾向があって醤油を使わず化学調味料と酸でつくるものと醤油を加えるものです。 どちらも細刻し御飯にかけて食べてもよく、おむすび、海苔巻きの芯にもよく合います。食塩5%、醤油類は使えば20%、化学調味料1.5%、酸0.8%が製品の旨味成分になります。大抵、紫赤色に着色して漬物盛り合せの色彩を豊かにしていますが着色しないものもあります。

ハリハリ漬

4つ割にした割り干し大根を薄切りにしたもの9割に昆布、生姜細切り、唐辛子、白ゴマの合計1割を混ぜて黄色い甘酢液に浸した漬物です。食塩5%、醤油類5%、化学調味料1.2%、甘味度15%、酸1%の製品分析値で乾燥の効いた大根の歯切れと濃厚な甘酸っぱさが旨くカレーライスに合います。ただ近頃では干したくあんからつくった「つぼ漬」に押されて販路は小さくなっています。

生姜漬

生姜漬には紅生姜、甘酢生姜(ガリ)と最近売り出し中の新生姜があります。生姜は房州、高知、長崎が産地ですがそれは生食用に回り大部分は中国、タイからの輸入原料でつくります。紅生姜は塩蔵生姜を有機酸の液に浸して赤く着色したものです。塊状、スライス、千本切り、みじん切りと種々の形があって食塩6%、酸1.4%、色素0.05%の成分値です。紅生姜は焼そば、ちらし寿司、お好み焼きから牛丼まで広く具材として使われています。甘酢生姜は寿司には付き物で持ち帰り寿司弁当にも小袋に入ったものが添付されています。寿司の間に食べるのは楽しいものです。大型の塩蔵生姜を厚さ1mmくらいにスライスし脱塩し甘酸っぱい調味液に浸せば完成という簡単なものです。食塩2%、甘味度15%、酸1.2%の成分値です。着色料の赤色106号0.0005%を使ってピンク色に仕上げますが最近は白ガリといって無着色のものも多くみられます。新生姜はハジカミ用の小生姜を50cm位の穴の底に埋め新芽が伸びてくると土を掛けてゆく軟化伸長栽培をして長さ30cm以上の指状の生姜をつくります。古漬は普通は塩度20%以上の塩蔵品にしますが、新生姜は塩度6%で漬け冷蔵庫、冷蔵コンテナで腐敗させないように輸送して、調味加工します。低塩低温塩蔵のため脱塩しないで全身これハジカミという鮮度の良い生姜漬になります。食塩5%、化学調味料0.8%、酸0.9%の成分値の直径1cm、長さ10cmの生姜で縦に切って食べます。古漬は脱塩するため野菜風味が逃げがちですが新生姜はここが違います。このような製品を塩蔵浅漬といいます。

ラッキョウ漬

甘酢ラッキョウ漬は食塩1.5%、甘味度30%、酸0.9%の成分値で低塩漬物に属しかつ食物繊維が7%もあるので健康的です。このため3.2万tもの生産量を誇ります。塩蔵ラッキョウを塩度4%まで脱塩し調味液に浸して味をしみ込ませてから小袋に入れて密封し加熱殺菌すれば出来上がりです。というと簡単そうですがラッキョウは葉茎と根元を切り落とした両端の切り口からしか塩も抜けないし味もしみ込まないので脱塩は容器の下部から水を噴射して一晝夜かけないと塩が抜けませんし、味付けも調味液の中に1週間も浸さないと味が浸み込みません。ラッキョウ甘酢漬の調味処方を示して説明します。

工程図

ラッキョウ甘酢漬は上記の調味液に脱塩ラッキョウを投入すればよく、例えばワインラッキョウを作りたければ水26.74kgの全量を赤ワインに置換すればよいのです。ラッキョウ漬にはこの他、たまりラッキョウ、塩ラッキョウ、ピリ辛ラッキョウなどがあります。

ニンニク漬

健康ブームにのって抗菌性、血栓防止、精力増強のニンニク漬はよく売れています。簡単なものでは塩蔵ニンニクを脱塩し醤油系調味液に浸した蜂蜜ニンニクがあります。よく売れているのはニンニクの薬食効果に他の薬食効果を上乗せしたダブル薬食の製品でこれには味噌カツオニンニク、南高梅ニンニクがあります。ここでは味噌カツオニンニクを説明しましょう。

工程図

塩蔵ニンニクを流水24時間脱塩して塩度6%まで下げてから砂糖、酸、化学調味料、アルコールを水に溶かした調味液に2晝夜、冷蔵庫の中で浸し、食塩4%、甘味度10%、酸0.4%の調味ニンニクをつくります。ここで調味ニンニクを重量の3分の1量の味噌カツオを調製します。味噌かつおは簡単に云えば塩度5%の味噌汁を作っておいて味噌汁の重量の2分の1のよく粉にしたカツオブシを投入し混ぜて味噌汁を浸み込ませ味噌デンブをつくるのです。ただ味噌だけでは味が悪いので味噌汁を作るとき醤油、砂糖、化学調味料、焼酎を加えます。こうして出来た調味ニンニクに味噌カツオをよくまぜれば完成です。付着をよくするため天然糊科を使うこともあります。

味噌漬

味噌漬の生産量は1.1万tで決して多くありませんが根強い人気があります。昔のような味噌の中に野菜を漬ける方法は高塩になり過ぎてノドを通りませんし、味噌自体が味噌汁にしたとき抵抗のない味にするため、あまり旨くないので味がのりません。今の味噌漬は塩分12%の味噌に醤油、アミノ酸液、砂糖、化学調味料、アルコール、水を配合して食塩5%の低塩で旨くて甘い味噌床を作りその中に4%まで脱塩した塩蔵野菜を漬けて5%前後の塩分の低塩味噌漬をつくるのです。

工程図

4%まで脱塩・圧搾した大根・胡瓜10に対し味噌床6の割合で容器に漬込み冷蔵庫中2週間味を染み込ませます。取出して同様の組成の新しい味噌床に再び漬込み、冷蔵庫中2週間放置しますとおいしい味噌漬が出来ます。この味噌漬を江戸味噌(6%)を少量の水でゆるくした化粧味噌に混ぜて袋詰して加熱殺菌すれば現代味噌漬が出来上がります。現代味噌漬の成分は食塩5%、化学調味料1.8%、甘味度18%、酸0.4%、アルコール1%が理想的です。低塩で抵抗なく食べられる味噌漬で味噌漬復權のカギをにぎる製品です。栃木県を中心にたまり漬というものがあります。たまり醤油・たまり味噌は大豆にごく少量の小麦を使って作る名古屋名産の調味料ですが、栃木の製品は伝統的につくられていた「振り分けたまり」に名前の由来があります。味噌漬製造の第2床で漬上った味噌漬をよく水洗したのちアミノ酸液、砂糖、化学調味料からなる清澄な調味液を使って瓶詰か袋詰にして加熱殺菌したものです。味噌漬より近代的感触がありますがほとんど同じものです。

奈良漬

酒粕に脱塩野菜を漬けた粕漬の一種で2.6万tもの生産量があります。単価が高価なため生産量は少ないのですが出荷金額は漬物全体の1割を占めています。酒粕の中に越瓜や守口大根が埋まった形の製品で消費者が粕をどけて包丁で野菜を切るという行為を嫌うのが奈良漬業者の悩みで酒粕を除いて切ってある製品もあります。 奈良漬の製造原理は酒粕の中の糖分とアルコールを埋め込まれた塩蔵野菜の中に移し入れて、逆に塩蔵野菜の食塩を酒粕中に放出する野菜と酒粕の成分交換にあります。したがって昔は塩蔵野菜を酒粕に漬けて毎月漬替えて1年かけて完成という手のこんだものでした。今は塩蔵野菜をあらかじめ12%位まで脱塩しておいて粕に漬け毎月1回、漬替えて2回漬替え後、出荷する方法がとられています。奈良漬はお歳暮によく使われますが、そのためには8月から漬込む必要があります。 奈良漬製造は(1)粕床用酒粕の熟成、(2)脱塩野菜の酒粕えの漬込みの2つに分かれます。熟成酒粕は冬仕込みの清酒のしぼり粕を2月に桶に踏み込みます。熟成とは酒粕の10%のデンプンを6ヶ月熟成して糖化し糖分6%まで甘くすることです。酒粕のアルコールは6〜9%の間にありますがやや不足なので酒粕10kgあたり35%焼酎1.5lを添加すればアルコールはおよそ10%になります。酒粕はそのまま8月まで熟成します。脱塩野菜漬込みは流水脱塩した野菜を越瓜・胡瓜は原料重量まで圧搾、守口大根は水切りして粕床に漬けます。ここでの注意は粕床の糖分が6%と少ないので熟成粕に砂糖20%、10kgあたり2kgを加えてよく撹拌します。野菜の脱塩は強く塩を抜くと粕床漬込中の糖とアルコールの浸み込むまでに酸敗するので12%以上でとめます。酒粕の使用量は野菜の30%です。1ヶ月目、2ヶ月目の2回漬替えて3ヶ月目の日に別の化粧粕を使って樽詰もしくは袋詰します。漬込時の塩分14%、1ヶ月目11%、2ヶ月目8%、で3ヶ月目には5%になります。完成品の分析値は食塩4.5%、全糖25%、アルコール4.5%です。漬込野菜では胡瓜の食塩低下は早く、越瓜、守口大根は遅い傾向にあります。この他の材料では長さ1.5mの守口大根に対抗できる重さ10kgの桜島大根を厚さ3cm、長さ20cmの楕円形に切った鹿児島特産のサツマ漬、鹿児島漬があります。

ワサビ漬

熟成酒粕にワサビの葉柄、根茎を練り込んだワサビ漬は旨いものです。韓国のスパイス漬物キムチが25万tの生産量を誇っているのにワサビ漬は年間8500tというのは残念です。ワサビ漬はワサビの葉柄を10%の食塩で漬けるところから始まります。これが出来たら以下の配合で練り上げれば完成です。

ワサビ漬の配合

JAS製品 普通品
塩漬ワサビ葉柄 33 10
細刻生ワサビ根茎 10 4
砂糖 6 6
アリル辛子油 0.1 -
カラシ粉 - 3
化学調味料 0.3 0.5
酒粕 50.6 76.5

市販ワサビ漬の分析値はワサビ混和率42%、食塩3%、甘味度14%、アルコール5%です。ワサビ漬にはこの他、ウニワサビ漬、数の子コワサビ漬があります。

山海漬

山海漬はワサビ漬と同様に熟成酒粕に胡瓜、大根の山の幸、数の子の海の幸を練り込んだものです。数の子の良質なものが高価で品質の良い山海漬が少かったのですが、ここ1、2年、数の子が世界各地から入るせいか数の子の量が増えて大尸おいしくなり量販店の店頭にも復活して来ました。製品の成分は食塩3%、甘味度18%、酸0.3%、アルコール0.3%で漬物自体の配合は酒粕30%、胡瓜10%、大根20%、数の子40%あたりですが数の子のもっと多いものもあります。数の子76%というものがありますがこれは水産物が農産物を上回るので農産物漬物の範疇からはずれます.野菜と水産物の混和の漬物は調味料では出せない味覚を示します。21世紀の漬物といえましょう。

鉄砲漬

越瓜の真ん中をくり抜いた状態を砲身に見立て、シソ巻きの唐辛子をくり抜いた孔に詰めることが弾丸をつめた状態になるとして千葉県佐原、茨城県潮来の鉄砲漬は誕生しています。強い圧しの効いた良い歯切れの醤油漬で日本の漬物ベストテンにも入る旨さです。脱塩、圧搾した開孔越瓜にシソ巻き唐辛子を詰め醤油、化学調味料に少し砂糖を加えた調味液に冷蔵庫で漬けたものです。3日おいて同じ調味液に2度漬6日間で完成します。食塩4.5%、化学調味料1%、甘味度5%、酸0.4%の成分値です。調味液は本場千葉県産醤油を14%加えています。これ以上ない旨さですが歯切れが良いところが硬いととられて売れ行きは横這いです。近頃、筒便性を売るため薄い輪切りにした鉄砲漬も現れています。成田不動の門前町に多く売っており、浅漬タイプの越瓜鉄砲漬もみられます。胴詰め、ハラミ漬、印籠漬とも言って、金婚漬、養肝漬など全国にこのタイプの漬物があります。